河合隼雄の『ユング心理学入門』(1/2) 分析心理学とタイプ論
自分を知る手がかりとして、心理学の本を読んでいます。学んだことを私なりにまとめてみました。自分が興味を持った箇所に偏っているので、ユングとは何かを正確に知りたい方には向かない記事です。そして心理学の専門知識がないため、間違っている箇所もあるかと思います。もし誤りがあれば、ご指摘いただければと思います。
『ユング心理学入門』
おそらく日本で最も有名なユング研究家、河合隼雄の本を読みました。タイトルは入門ですが、「フロイトおよびアドラーの著作には少しは目を通してくださっていることを期待している」とあります。心理学を専門的に勉強したことがない私には、かなり難しく感じられました。
3人の学者と、心理学
上に名前をあげた3人の心理学研究者の学説はそれぞれ
と違う名前で呼ばれています。本書はユングの分析心理学について説明しています。
フロイトについて
フロイトについては『図解 ヒトのココロがわかるフロイトの話』を先日読んだばかりでした。概要をさっと知ることができる本です。
フロイトは無意識という概念を提唱した人ですね。何でも性に結びつけすぎるので、どうもなじみませんでしたが、はなしとしてはおもしろかったです。
アドラーについて
アドラーの個人心理学には興味を持っており、何冊か読んだことがあります。入り口は『嫌われる勇気』でした。おもしろかったので、続編にあたる『幸せになる勇気』と、簡単な入門書を何冊か読みました。
さらに前から、ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』を愛読しておりました。彼はアドラーの流れをくむ(のちに破門となる)心理学者です。先日『それでも人生にイエスと言う』を読み終わったばかりです。今、感じたことを消化中なので、また記事にまとめたいと思います。
アドラーの、「目的論」は私好みではありますが、気分が落ち込んでいる人は読まないほうがいいかもと、個人的には感じています。
心の現象学とは
ユングはオカルト的な扱いを受けることが多い印象です。その理由が心の現象学の誤解からくるものであることがわかりました。
われわれは処女懐胎を一つの事実として、承認するというのではなく、処女懐胎という考えが存在するという意味において、その考えを心理的現実として取り上げようとするのである。このような考えが多くの人の中に存在したという現象を、心の現象として追求してゆく態度を取るのである。『ユング心理学入門』P.12
本書ではキリスト教の処女懐胎を例に説明しています。心理療法家は説明できないものを説明できないまま受け止め、その背後にある情動に注目することで、解決へと至る道を患者と共にすることはできるのではないかと主張しています。あくまで「心の」現象なので、「事実」の現象として受け入れるかは別ということです。
ユングは説明できないものを「事実」として受け入れているという誤解が、オカルティックな扱いを受ける原因だと考えられます。彼自身が占星術師の家系の生まれだとか、錬金術にのめり込んだというエピソードもあるので、それも原因かなあとは思いますが。
人間の類型ータイプ論
ユングといえばタイプ論が有名。
まず、タイプを分けることは、ある個人の人格に接近するための方向づけを与える座標軸の設定であり、個人を分類するための分類箱を設定するものではないと強調したい。
『ユング心理学入門』P.38
そういう傾向があるよね、程度に押さえ、無意味なレッテル貼りはしないこと。肝に命じます。
一般的態度、内向ー外向
ユングは人間には異なる二つの一般的態度があると考えます。内向的態度と外向的態度です。
- 外向的とは:関心や興味が外界の事物やひとに向けられ、それらとの関係や依存によって特徴づけられている
- 内向的とは:関心が内界の主観的要素に重きを置いている
ふつうはこれら両方の態度を共に持ち合わせています。そして新しい場面に入るときの行動によって、両者の相違が特徴的に出てくると説明が続きます。
外向型のひとはつねに適当に行動できるのに対し、内向型のひとはどこか、ぎこちない感じがつきまとう。
『ユング心理学入門』P.42
内向型のひとは、当惑を感じ、こんなことをいっては笑われるかもしれぬと黙り、ときには、「こんなときは、にぎやかにしなければならない」などという考えにとらわれて、馬鹿げた行為をしてしまって、あとで一人後悔してみたりする。
『ユング心理学入門』P.42
内向的な子供は、幼稚園や小学校の低学年で困難を感じることが多い。彼らは友人をつくりにくく、先生にもなじみにくい。ゆたかな才能を持っていても、それを伸び伸びと出すことができず、それはときに、変なものとさえ見られやすい(中略)大人たちがその性格を矯正しようと努めたり、異常であるときめつけたりすることによって、発達の過程を歪められる場合が多いように思われる
『ユング心理学入門』P.42-43
内向的なひとが過度に自己批判的で、自信なさそうに見えながら、いったん思いこむと少々の障害にはたじろがない態度をとる
『ユング心理学入門』P.43
共感できる内向型の説明を中心に引用してみました。逆に外向型のひとが異星人に思える。人間関係の適当ってどうやるのかわからない。
個人の素質による態度を逆転させると、はなはだしい疲労現象が現れ心の健康が害される
『ユング心理学入門』P44
よく分かる!自分は内向型にかなり振り切れているタイプなのかな。外向的な能力を必要とされる場面はとても疲れます。
四つの心理機能
各個人はおのおの最も得意とする心理機能を持っているとユングは考えます。心理機能とは、種々異なった条件のもとにおいても、原則的には不変な、心の活動形式です。ユングはこれを四つの根本機能として以下のように区別して考えました。
- 思考
- 感情
- 感覚
- 直感
主機能と劣等機能
思考と感情、感覚と直感は対立関係にあります。思考機能の発達している人は感情機能が未発達であり、感情機能が発達している人は思考機能が未発達である。感覚と直感も同じ関係にあるとします。発達している機能を主機能、未分化な機能を劣等機能と呼びます。ただし未分化であるから弱いという意味ではないことに注意。わかりやすく書き換えるとこうなります。
- 思考⇄感情
- 感覚⇄直感
補助機能
例えば、直感が主機能の人が得たものを適切に獲得してゆくためには必ず思考か、感情機能による判断の助けを必要とします。もしそのひとにとって思考が主機能の次、第二次機能であるとすると、感情は第三次機能で、多分に未分化なものとなります。そして感覚は劣等機能として最も未分化なものとなります。この第二次機能を補助機能とします。
直感
四つの機能のうち、直感についておもしろく感じたので抜粋します。
これは事物そのものよりも、その背後にある可能性を知覚する機能である。その過程は無意識の道をたどって生じるので、どうしてそれが得られたのか、他人にもわからず、本人さえも説明に困るという厄介な性格をもっている。このため、直感型のひとが、その結論や推論や事物の観察によって得られたように思い込んでいる場合も多い。しかし、その説明をよく聞くと、先行した正しい結論に未分化な思考や観察があとでかぶせられているにすぎないことがわかる。
『ユング心理学入門』P.55
論理的に考えるようにしているのですが、その根拠は直感だったりするのでしっくりくる説明でした。
八つのタイプ
ユングは内向・外向と四つの主機能を組み合わせ、ひとを八のタイプに分けることができると考えました。外向的感情型とか、内向的感覚型のように。
外向的思考型のひとは、自分の生活を知性の与える結論に従わせようと努めている。(中略)感情があまりにも抑圧されているときは、ときに本人の意識的な制御をこえて表面に現れることがある。たとえば、つねに論理的・合理的であることを誇りとする学者が、自分と正反対の学説に関しては、まったく感情的反発としか思われない言動をしたり(中略)一般に硬い外交的思考型のひとは、その例外を許さぬ態度や、息抜きとしての未分化な感情反応によって、家族を苦しめていることが多い。
『ユング心理学入門』P.50-P51
私このタイプの人たくさん知ってる。自分は論理的に正しいと主張し、「女のくせに」って感情的に言ってくる男の人。
内向的直感型のひとも理解されがたく、外界に適応しがたいひとである。
『ユング心理学入門』P.56
この型のひとは、 自分の内部の一種の独創性に悩まされているひとということができる。これは実際生活にはむしろ都合の悪いものだから、自分の本来の傾向を無視するため、無理に機械的・実際的なことをやろうとして、内的な摩擦のため神経症に陥っているひともある。
『ユング心理学入門』P.57
これを読んで私はもしかして、内向的直感型なのではないだろうかと感じました。
外向型のひとにとって、内向型のひとは、わけのわからない冷淡な臆病者と見え、逆に後者は前者を、軽薄で自信過剰なひとと思う。
『ユング心理学入門』P.60
内心ではよろこんだり、悲しんだりしているのに、冷たいってよく言われます。あと、大抵の人はどうしてそんなに自信があるんだって不思議で仕方がありません。
一般に男性の場合は、主機能によって生きようとの態度が強く、型がわかりやすいが、女性の場合は、鋭さよりも柔らかさが期待されるため、一つの機能が鋭角的に開発されていないことが多く、したがってその型もわかりにくいようである。
『ユング心理学入門』P.60
心理療法の場合、劣等機能の開発をすぐに手がけるより、補助機能の発展に心がけるほうが適当な場合が多いが、事例によるとされます。
西洋と東洋の違い
「日本で、ユングの考えをそのまま適用できるか否か」については
一つの機能を発展させるよりは、たとえ未分化でも全体としてのまとまりをおう傾向や、得意なもの(主機能)を伸ばす楽しみよりは、不得手なものに注目して「苦行」しようとする生活態度などに結びついて、際立った型を見出しがたくしているようにも思われる『ユング心理学入門』P.62
ありゃ、私の人生「苦行」って言われちゃいました。でも分かる。自分でもどうしてこんなに向かないことにしがみついてしまうんだろう? と疑問に思うことがたくさんあります。でも、乗り越えたときに自信となるので、中毒になっちゃってるのかも。
とりあえず途中までまとめてみた感想
なるほど、よくわからんというのが感想です。 まず、専門知識が足りなすぎます。それでも、タイプ論などは納得することが多くおもしろいです。このまとめではあえて触れませんでしたが、ユングの心理療法の肝は夢の分析です。しかし、夢の分析に関してはこじつけに感じてしまい、なじめませんでした。
みんなそんなに都合がいい夢見るの?私が見る特徴的な夢といえば、ほとんどがトイレに行きたいけど行けないという夢です。当然、目が覚めたらトイレに行きたくなっています。あと、大学生のころに歯が抜ける夢を毎晩見ました。夢占いでは割と有名で、新しいことが起きる兆候とされています。しかし、親知らずを抜いたら見なくなりました。歯が痛かっただけです。
そんなわけで、全てをそのまま受け入れることは難しそうです。(2/2)へ続きます。