イイタイダケ

言いたいだけです。

『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』は本当に「すごい」?

引き続き日本語に関する本を読んでいます。

 

毎日新聞校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』

「文章術」とある題名の通り、文章の書き方を知りたいと思い選びました。

 

校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』との比較

先日読んだ『校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』の筆者と同じ、毎日新聞社校閲グループに所属する方が書いた本です。よくある誤用など、内容は重なる部分もあります。

しかし『校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』が校正・校閲の技術を中心としているのに対して、今回読んだ『毎日新聞校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』は敬語・謙譲語や動詞の活用など文法的な部分や、意味が変化しつつある言葉をどう使うかなどにも詳しく触れています。

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「居」の意味を理解していなかった

「居並ぶ」は単に並んでいる場面で誤用されることが多いのですが、「並んで座る」の意味になります。座るというイメージがありませんでした。居ても立っても居られないで考えれば分かるのですが、今まで気がつきませんでした。

 

間違いやすい言葉

私もどこかで間違えている気がするのでメモ。正しい言葉を前に、間違いやすい言葉を括弧内に記しました。正しい・間違いとする理由は本書を読んでみてくださいね。

  • 貯金は取り崩す(x切り崩す)
  • 肝に銘じる(x命じる)
  • 少年の更生(x更正)
  • 味わわせる(x味あわせる)
  • おぼつかない(xおぼつかぬ)
  • 自信なげ(x自信なさげ)
  • 所在なげ(x所在なさげ)
  • 多め(x多いめ)
  • すごく多い(xすごい多い)
  • 高齢の人(x高齢な人)
  • 知ってか知らでか(x知ってか知らずか)
  • 押しも押されもせぬ(x押しも押されぬ)
  • 願わくは(x願わくば)
  • 能う限り(x能うる限り)
  • ささぐる絵(xささぐ絵)

 

「魅せる」はオタクが使いがち?

「魅せる」は文法的に誤りで正しくは「魅する」、もしくは「魅せられる」なら間違いではありません。「見せる」か「魅了する」に言いかえるのが適切なのだそうです。でも舞台の紹介文などでオタクが使いがちな気がする。

 

再び、さいとうさん

校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』でも出てきた「さいとう」さん問題です。

  • の新字は
  • の新字は

 であることを理解しました。本書ではさらに

「斉藤」「セイトウ」

と音読みで覚える方法を知りましたので、もう間違えないはず。

 

漢字の使い分け

まぎらわしい漢字の使い分けについて。

漢字の使い分けに迷ったら、対応する熟語を考えるとすっきり分けられる場合が少なくありません。
毎日新聞校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』P.154

例えば

  • 海を望む(展望)
  • 海に臨む(臨海)

のように考えれば分かりやすいというわけです。

 

擬態語を片仮名で書く場合の「ッ」

「ドキッと」は「ッ」まで片仮名に。
毎日新聞校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』P.159

ずっと謎だった小さい「ッ」問題。平仮名と片仮名で悩んでいたのですが、解決しました。

 

いつも迷う外来語

原音に照らして適切な表記が前で、不適切な表記が括弧内です。でも、不適切とされる表記の方がよく見かける気がします。特にパーティション。通販で検索するときに困った記憶。

  • エンターテインメント(xエンターテイメント)
  • パーティション(xパーテーション)
  • メリーゴーラウンド(xメリーゴーランド)

 

3度目の登場「雨模様」

慣用句の誤用として、また「雨模様」が登場しました。『常識として知っておきたい 正しい日本語の練習』『校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』に続き3回目です。よほど間違えやすいのね。

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慣用句の本来の意味と誤用について

雨模様のように、本来の意味より誤用の方が広まってしまっている場合にどうするのか。問題になっている言葉を使うかどうかは

・読者の年齢層を考える。不特定多数なら高めに設定し、新しい用法は避けた方が無難。
・誤解を招くかどうか予想する。両様の解釈が想定されるなら「本来」の使い方を選んだ方がよい。適切な言い換えができるなら、別の言葉で。
・あえて使うなら反発も想定して理論武装する。可能なら「この言葉は本来別の意味だったが」などと断って使うと誤解を招かない。

毎日新聞校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』P.232

とし、そもそもの前提として、何が問題になる言葉なのかを知っておくことが必要だと示しています。

 

日本語も、文章もむずかしい

言葉の使い方は算数のように割り切れるとは限りません。
毎日新聞校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』P.178

言葉は時間とともに意味や使い方が変わっていくから、むずかしいんですよね。

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「すごい」文章術

「すごい」という言葉は、昔は「ぞっとするほど恐ろしい」という意味だったそうです。

何の気なしに書いた言葉が、読み手にとって全く別の意味で受け取られることが多いということを、書き手は「すごい=恐ろしい」と思って欲しい。気軽に発信した文章が、大量に拡散される可能性がある時代だからこそ、自分の文を読み返し言葉を磨いて欲しい。

毎日新聞校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』P.255

タイトルにはそんな願いが込められているそうです。まさかこんな仕掛けがあるなんて、やっぱり言葉のプロは「すごい」。

 

 

 

 

やっぱりプロはすごい。『校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』を読んだ

 引き続き日本語の勉強中です。

 

校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』

「あらゆるミスを見逃さない」という言葉に惹かれて読んでみました。演習として提示されるダミー記事が難しい。ほとんど間違いが見つけられませんでした。やっぱりプロはすごい。

 

洋数字と漢数字の使いわけ

ほかの数字に置き換えられないような言葉は漢数字で書いて、ひとまとまりの語句であることを表します。

校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』P.72

これはわかりやすい説明。横書きの場合は洋数字にした方がいいか悩むんです。読んだ人が違和感を持たないようにすることが大事なのだそうです。

 

他の仕事にも役立つチェック方法

「流れを読む」
「読まずに、一字一句、指で押さえて見る」
「片仮名だけ見る」
「数字だけ見る」
と、幾通りものチェックの仕方をします。見方を変えて見ると、別の違和感が生じて手と目が止まることもあるからです。

校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』P.80

前職で実行していた文章や伝票のチェックととほぼ同じ方法なのでおどろきました。片仮名だけ見るは固有名詞・単位だけ見るでしたが、どんな仕事でも応用できるんじゃないでしょうか。私の場合、一字一句見るときは、後ろからチェックしていました。

 

知らなかった言葉の使いわけ

  • 牛の脂は「ヘット」。「ラード」は豚の脂にしか使えないんですね。
  • 餅をつくる米は「もち」米。漢字では「糯」であって餅ではない
  • 食べられるのは海藻で、食べられないのは海草

勉強になりますね。

 

さいとうさん、ごめんなさい

  • の新字は
  • の新字は

なのだと初めて知りませんでした!みんな知ってるの?全部で書いていたかも。
全国の齋藤さんと齊藤さんごめんなさい!
でも取引先の齋藤さんは自分で斉藤って書いてたな。

全国のさいとうさんに謝罪します。

 

使っている人が多ければ正しいの?

使っている人が多ければ正しいのか?という問題については再び「雨模様」が登場しました。

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役不足

「割り振られて役に不満をもつこと、役割が実力に比べて軽いこと」が本来の意味

校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』P.135

としています。田中芳樹さんの小説で覚えたなあ。でも諸説あるとも聞いたし、日本語はやっぱり難しい。『創竜伝』、今は講談社文庫版がないのか。

 

 

「ヶ」は片仮名ではなく記号

東京メトロの駅名、霞ヶ関の「ヶ」は片仮名ではなく、記号なんですね。でも地名は霞が関で平仮名の「が」。ややこしい。

 

ら抜き言葉」に関して

国語学者金田一秀穂さんの言葉を引用しています

「『ああ、変わってきたのか』とは思うが、乱れているとは思わない」

校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』 p.202

私も「ら抜き言葉」は使います。でも「さ入れ言葉」は気持ち悪いんだよなあ。前職でなんでも「ささせていただく」人がいて、気になって仕方がなかったんですよ。

 

校閲とAI

AIに関しても少し触れられていますが、結局はAIがした仕事をチェックする仕事があるんですよねえ。私は日本語の仕事がAIに置き換わるには、かなり時間がかかるのではないかと思っています。

 

「正しい日本語」はあるけど、ない。

「正しい日本語」といっても、何が正しいかという決定的な規範を示すことは難しく、しかも言葉は移り変わっていくものです。しかし、その中であがきつつ可否を判断したり、基準を設けたりするのもまた人です。

校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』P.220

結局はここに行き着くんですよね。やっぱり日本語ムズカシイね。

 

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『常識として知っておきたい 正しい日本語の練習』で雨模様の意味を知りました

引き続き日本語についての勉強。

 

『常識として知っておきたい 正しい日本語の練習』

 『常識として知っておきたい 正しい日本語の練習』を読みました。間違いやすい語句を正しい用法、間違った用法、2つの文にして並べて解説した本です。

 

「雨模様」のとき雨は降っているの?

A.外は雨模様で、用心のために傘を持って出かけた。
B.外は雨模様で、仕方がないので傘をさして出かけた。

この2つの文章、どちらが正しいか。私ずっとBが正解だと思っていました。でも答えはAです。

「雨模様(あめもよう・あまもよう)」とは、「雨が降っている様子」「雨の様子」ではなく、「雨の降りそうな空の様子」(広辞苑)、「雨が降りだしそうなようす」(日本国語大辞典)のことをいいます。

 

私が間違えて覚えていた語句

「つらつら考える」はぼんやりと考えることだと思っていたのですが、深く考えることなのでまったく逆でした。

 

三寒四温」は早春ではなく冬に使う語句だというのにはびっくり。もとは中国の東北部や朝鮮半島北部で冬の気候を表す言葉なので、日本ではそのまま使えないんですね。日本だと、春が近づいてくることをあらわす誤用の方がしっくりきます。

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意外な語源

ダントツが断突ではなく「断然トップ」の略であることも驚きました。ひょうたんから駒が出るの「駒」が「馬」の意味であることも知りませんでした。

 

誤用が正しくなる日

一部、世論調査のデータを上げているのですが、誤用の方が広く使われている場合があるのがおもしろいですね。「言葉は多数決で、どんな間違った言葉でも大勢の人が使い出すと、それは正しい言葉になってしまう」と『日本語教室』で学んだとおりですね。

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それでもできる限りは正しい日本語を使いたい

正しい日本語というのも、もはや幻想であることは理解しました。それでも本来の意味は知っておきたいなあと改めて思いました。

 

 

わかっているようでわからない、日本語 /『日本語教室』と『日本語という外国語 』

ブログを書いていて気になることがあります。それは、自分が使っている日本語は正しいの? ということです。そこで改めて日本語とは何かを学ぶことにしました。

 

 

『日本語教室』

作家、井上ひさしさんの講義を再現した本です。縄文時代、東北弁が標準語だった説がおもしろい。出雲でも東北のいわゆる「ズーズー弁」がはなされていることを初めて知りました。本当に東北弁が標準語だった時代があるのかは、諸説あるのでわからないとのことです。

芝居を書くときに気をつけることを、興味深く読みました。やまとことばでないとだめで、漢語ではお客さんの理解が一瞬遅れるとのこと。やまとことばというのは漢語や外来語ではない、「見る」「取る」「山(やま)」「海(うみ)」のような日本語の固有語のことです。確かに漢語だと同音異義語が多すぎて、どの意味か悩んでしまう。「こうしょう」という言葉には48もの意味があるんですって!

www.kanken.or.jp

 

また、「う」という母音は客席に届きづらく、そのため「い」の音を生かすそうです。色々と工夫されているんだなあと感心しました。次に舞台を観るときに注目(注耳?)してみよう。

 

しかし日本語の文法を勉強しようと思ったのに

私たちは日本語の文法を勉強する必要はないのです。無意識のうちにいつのまにか文法を身につけていますから

『日本語教室』P.161

と言われてしまいました。確かにその通りだ。

 

 

 

『日本語という外国語 』

本書が書かれた当時、自分の第一のことばとして日本語を話す人の数は、全言語のうち第9位なんですって。ドイツ語やフランス語の話し手より多いことに驚きました。


日本語は単語の数が多く、習得するのは難しいイメージがありました。しかし音の数が少ないため、「話しことば」の日本語は意外にやさしいとあり、その通りだなと考え直しました。ただし音の数が少ないために、同音異義語が多くなるという問題があります。これは『日本語教室』でも指摘された通りで、漢語で起こることが多い現象ですね。

 

 

 

『は』と『が』の使い分け

  • 私は鈴木です
  • 私が鈴木です

の「は」と「が」の使い分けに関しては、どちらの本にも同じことが書かれています。既知の旧情報には「は」を、未知の新情報を受ける場合は「が」を使うのです。意識せずに使い分けているので、説明されると不思議な感じがします。

 

外国人学習者に『は』と『が』の使い分けを教える場合はもっとシンプルに教えるようです。

「何」「誰」のように疑問を示す語が最初に来る文では「が」を使う。と、単純なルールにして教えます。

『日本語という外国語 』P.122  

 

日本語を学ぶことは外国語を学ぶことにも繋がる

『日本語教室』では母語より大きい外国語は覚えられないので、英語より大きい母語が必要だと書かれています。

 

これはちょっと疑問に思いました。本書にも出てきた「リコンファーム」は日本語では「予約再確認」なのですが、わざわざ和訳せずに理解していました。でも、飛行機・予約・搭乗・再び・確認などの言葉を母語として知らない場合は理解できないか。確かに、知らない概念をいきなり外国語で理解するのは難しそうです。

 

 

そもそも正しい日本語とは

自分が書く日本語が乱れているのでは、と気になって本を読み始めました。しかし『日本語教室』によると、言葉は常に乱れているのでそう心配することもないそうです。言葉は多数決で、どんな間違った言葉でも大勢の人が使い出すと、それは正しい言葉になってしまうからです。

 

前の職場で働いていてずっと気になっていることがありました。「代替(だいたい)」なのですが、私以外全員「だいがえ」って言うんですよね。その方が伝わりやすいのは理解できますが、逆に「だいたい」でもわかると思うんですよね。自分一人で「だいたい」と言っていると、私の方が間違えている気持ちになってきます。これからは「だいがえ」が正しいということになるんだろうなあ。

 

 

正しさよりも大切なことは共感

「美しい日本語」などありえない

『日本語教室』P.107

使っている人の言葉のそれぞれが日本語で、その総和が日本語なのだと僕は思っています。だからわれわれ一人一人が日本語を勉強して、日本語を正確に、しかも情感をこめて、自分のことはちゃんと相手に言えるし、伝えることができる、そのような言葉を一人一人が磨くしかないと思っています。

『日本語教室』P.109

 

結局、正しさにこだわる必要はないということですね。『日本語という外国語 』でも学習者と、学習者が話す相手とが気持ちよく日本語のやりとりができることが重要と説かれています。

 

伝えたいことがあること。伝えようと努力すること。そして相手を理解しようとすること。共感すること。正しさよりも大切なことに気がつきました。