今回は、ざっくりしたまとめと、私の感想が中心です。ユングとは何かを正確に知りたい方には向かない記事です。そして心理学の専門知識がないため、間違っている箇所もあるかと思います。もし誤りがあれば、ご指摘いただければと思います。
『ユング心理学入門』再び
このまとめは2/2ですが、本書ではここからが主な取り扱い内容です。
普遍的無意識
ユングは無意識を層に分けて考え、個人的無意識と普遍的無意識とに区別します。普遍的無意識は集合体的無意識とも呼ばれます。この普遍的無意識は、世界各地に似た神話があったり、統合失調症患者が同じような妄想を抱いたりすることの根拠とされます。
バナナ型神話だとか、洪水のはなしが世界各地にあるとか、まあそういうことです。「私は神だ」という人も説明できるようです。
元型
人間の普遍的無意識の内容の表現のなかに、共通した基本的な型を見いだすことができると考えました。ユングはそれを元型と呼びます。
代表的な元型
- ペルソナ
- 影
- アニマ
- アニムス
- 自己
- 太母
- 老賢者
ペルソナや影(シャドウ)は、心理学が好きな方なら知っていそうですね。ペルソナとは仮面のことで、社会に適応するためにかぶる猫のことです。違う?私もこのブログを書いているとき、働いているとき、夫と過ごすときで違う猫、もといペルソナを持っています。影は自分と正反対の人に嫌悪感を持つ、または惹かれるといった現象で認識しやすいかな。
アニマ・アニムスに関してはちょっと消化しきれていません。男性には理想の女性(アニマ)、女性には理想の男性(アニムス)があると言われても、そんなに割り切ったものにはならない気がします。これは現代とユングの時代のギャップもあるかもしれないです。タカラヅカは理想の男性ではなく、アニムスを追求していると言え……ないですね。男役は「男役」であって、男ではないから。
自己は意識と無意識とを含んだ心の全体性の中心であり、意識の中心となる自我とは異なります。
太母・老賢者は平沢進ファンにはおなじみの概念。太母は土偶です。違います。ごめんなさい。太母は母なる大地のように、土地や農作物に結びつけられることも多いですね。
アニムスに関してはおもしろい記述がありました。
アニムスに取りつかれた女性は、「……すべきである」と意見を述べる。
『ユング心理学入門』P.210
頼もしい男性の出現による未来の人生の設計などという、願望に満ちた考え(たぶんに空想的であるが、本人にとっては、一つの考えである)として生じてくる。そして、この素晴らしい考えによって、「女性も職業を持つべきである」とか、「自分の夫は一流大学出身でなければならない」とか、動かしがたい意見が形成される。このような願望に満ちた考えが強くなると、それとの比較によって、外界のあらゆるものは無価値に見えたり、つまらなくなったりしてくる。何に対しても浅薄な批判を加えているうちに、それがついには自分に向けられるようになり、自分を極端につまらなく感じたり、女であることを卑下したり、あるいは、過ぎ去ったことのみ取り上げて、「大学に行っておくべきだったのに」、「あの人と結婚しておくのだったのに」とくり返すことになる。
『ユング心理学入門』P210-211
こんな感じの人は上の世代で見たことがあるぞ。最近は減ってきている印象。
元型と妖怪?
原始人たちが森を開拓して住む所を作ったとする。そして仲間が何者かに殺されたとする。彼らはこれをなんと説明するか。結局、森の中の不可知なXのためにと考えるだろう。なんてことが元型の説明として書いてありましたが、日本人はこのような現象を妖怪と呼んだのではないでしょうか。
自己実現について
自己実現は人生の究極の目的であると述べたが、これは一つの静止した到達点があり、それを自己実現と読んでいるというものではない。(中略)自己実現はつねに発展してやまぬ過程であり、その過程そのもの大きい人生の意義がある。
『ユング心理学入門』P.228
そして四〇歳前後に、人生の後半に至るための転換期としての重要性のあることを、ユングは主張しています。これって中年の危機だね。そういえば私も中年だわ。主に仕事を通して自己実現を果たし、中年の危機をむかえて転職します。自分って単純だなあ。
実際の心理療法について
優秀な能力をもち、社会生活にすでに適応しているひとたちはどうであろうか。これらのひとの中には「適応しているがゆえに悩み」、「自分の正常さを耐えがたい地獄と感じるひと」がいるとユングはいう。(中略)努力の結果大いに成功し、いわば社会適応の頂点に達したときに問題が始まるのである。
『ユング心理学入門』P.250
治療者としてなすべき最善の方法は、「あらゆる先入見をすて去ること」
『ユング心理学入門』P250
カウンセラーを目指しているわけではありませんが、人との接し方について考えさせられる文章です。相手とちゃんと向き合えてきただろうかと自問自答しています。
『ユング心理学入門』を学んでみて
これを読んで人間の心理がわかる……わけはありませんね。一部は批判されている説もありますし、なにより難解でした。それでもワクワクして読みやすいのは、ユングというより、河合隼雄の文章力なのかなあと思います。あと、無意識や元型は色々な創作物の元ネタになっていることも多く、知識として仕入れておきたかったので、その目的は達成しました。
もうちょっと深掘りしたいので、ユングについては他の本も読んでみたいと思っています。