イイタイダケ

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Streaming+で『SHOW-ISMS Version マトリョーシカ』大千秋楽を観ました

日比谷シアタークリエで大千秋楽を迎えた『SHOW-ISMS Version マトリョーシカ』を観ました。再びStreaming+での視聴です。

 

SHOW-ISMS Version マトリョーシカ

7月20日からスタートし、一度だけ公演中止はあったものの、大千秋楽を迎えました。単なる視聴者ではありますが、ホッとしました。

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初回と千秋楽を観ました

2度視聴しました。大きな変更点はなく、多少アドリブが入ったくらいかな。私の記憶力なので当てにはなりませんが。初回は緊張感がありましたが、千秋楽では流れがスムーズになったなと感じました。

 

あらすじのようなもの

定時制高校に通う4年A組の生徒たちと、そこに新たに赴任してきたバンビ先生を中心とした物語です。バンビ先生は授業の一環として、合唱コンクールへの出場や、自分たちをテーマとしたショーを作成することを指示します。それぞれが問題にぶつかりながら、はっきりした解決はしないものの、前へ進む力を手に入れていく姿を描きます。

 

主な登場人物

  • ロンドン育ちのバンビ先生
  • 学習障害で計算と暗記ができない、建設作業員のヌーボ
  • 元暴走族・現在はDV被害者の番長
  • 高校生の時に妊娠して親に勘当された、シングルマザーのモモ
  • 日雇い労働者で病床の妻がいるおやっさん
  • 歌手を目指して高校を中退したマイコー
  • 小学生のころから親の仕事を手伝い、読み書きができないのりちゃん
  • のりちゃんの娘で、学がない母親を恥じているのぞみ
  • 野原高校を名門校にするため、定時制を廃止したい先生たち

 

2度観て気がついたことと、感想

群像劇であることから、初回に見たときは主題がよくわかりませんでした。生徒それぞれの問題や、それを解決する過程は理解できるのですが、一本筋の通った主題ってないのかなあと。

2度目に見たときに、バンビ先生が合唱コンクールや野原祭(学園祭のようなもの)にこだわっていたのは、定時制高校を廃止させないためだったのかなと思いました。初見のときもぼんやりとは感じていたのですが、明言されていなかったので判断がつきませんでした。そこを筋として観るとはなしがスッキリするなと思いました。

前回、合唱コンクールの野次について書きましたが、改めて考えると野次を飛ばしていたのは先生たちなのかなと思いました。定時制の生徒が活躍しては困りますもんね。 

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私が今作で一番印象に残っているシーンはサークルゲームです。バンビ先生が質問を読み、イエスの人は床に描いたサークルの中に入ります。それぞれの辛い体験を告白することになります。最初はなんて残酷なことをするんだと思いました。でも、同じ境遇にあるもの同士、口には出さなくても心を通わせる相手ができたことは、きっとよいことだったと思います。これはみんなが苦労してきた大人だから成り立つんですよね。若いとここまで心をさらけ出すことはできないと思う。

あと、「クラスに好きな子がいる」でヌーボの行動が怪しいのですが、好きな子はモモかな。オープニングのオンライン授業でモモの時だけ画面に食い付いて見てるので。

バンビ先生の謎が、謎のままなのが残念。ロンドン→日本の全日制高校→色々あって定時制→途中でロンドンの、色々あってのところを描いて欲しかった。帰国子女だったからなじめなかったのかな。最後生徒たちからバンビ先生が卒業証書を受け取り、彼女も気持ちの上で卒業できたことはよかったなあと思います。

 

ちょっとツッコミ

85分にまとめるという制約があったせいか、ストーリ展開は強引に感じました。気になった点のメモ。

ヌーボ、作業着のままの割に汚れていない。給料16万から18万になっても大して変わらないことはないぞ。毎月2万円貯金できたら、4年で100万円近く貯まる。税金も上がるけど。

番長、今どきヒョウ柄+スカジャンはさすがにない。そういえばなぜ番長がショーの衣装担当なのかが分からなかった。隠されたストーリーがあったのかな。DVはもちろん絶対だめ。でもお金は十分もらってそうなので不思議な夫婦関係だね。そしてDVを目撃したなら周りが止めた方がいいと思う。取り返しがつかないことになったらどうするんだ。

モモは踊ることを諦めたバレリーナを描きたかったのだろうけど、余白を埋めることを観客に頼りすぎ。息子は高2年なら、お世話はもういらないでしょ。一緒に暮らす家族なんだから、助け合おう。「ショーなんて不要不急」はどうしても言わせたかった言葉なんだろうけど、不自然すぎる。

のりちゃんの娘の、のぞみ。親にしてもらうことばかりではなく、親にできることを考えよう。母娘が和解できたことは分かりますが、娘のクラスがショーに参加するのは唐突すぎるので、そこまでの過程を描いて欲しかった。

おやっさん生活保護を受けれると思うのだけど、高校でアドバイスをもらったりできないのかな? 妻の生死とクラスの活動は関係ない。文句を言う暇があるなら、酒を飲まず付き添っていてあげて。

全員がステレオタイプ過ぎるというか、人ってもっと複雑だと思うんですけどね。でもそこまで描いている時間がない事情も理解はできます。

修学旅行が中止になったので、空想のエア修学旅行を実行。そのほかのシーンでも歌いだすのがかなり唐突。ヌーボ、フニクリ・フニクラを歌っていたけど、歌が覚えられないんじゃなかったっけ? ソーラン節なのはのりちゃんの実家が北海道であるという意味もあるけど、金八先生でソーラン節を踊ることのパロディ?

つい色々言いたくなるのは、時間があればもっとおもしろい作品になりそうだと感じたからです。幻のフルバージョンを観てみたかった。

 

魅力はやっぱり役者さん

バンビ先生役の美弥るりかさん、モモ役の夢咲ねねさんは元・宝塚歌劇団。宝塚OGは見た目だけでなく立ち姿や動作がきれいなところが好きです。

そして芸達者な方が揃っているので、迫力がある。唐突なソーラン節にツッコミを入れてしまいましたが、のりちゃん役の保坂知寿さんの力量には圧倒されました。おやっさん役の今拓哉さんも声量がすごい。お二人とも元・劇団四季なんですね。さすが。

平方元基さんは『マイ・フェア・レディ』でのフレディ役で観て、声がよく伸びる人だなあと思っていました。『エリザベート』のフランツ役で観るはずだったのに、公演が中止になったのが残念。

全日制の生徒でオーバー・ザ・レインボーを歌うシーンも、メガネをかけた女子学生役の方がお上手でした。お名前を調べきれていないのですが。

  

マトリョーシカの意味

教室にはマトリョーシカ置いてありました。それは前年に亡くなった生徒の、代わりの存在でした。そのマトリョーシカを示しながらバンビ先生は言います。「脱いでも脱いでもどこまでも自分」であると。

他にも「結局変えられない、それが自分だから」「過去に文句があるなら魔法使いにでも頼んで生まれなおしな。他の人に求めるな」「文句あるなら手前が変えろ」(うろ覚えですが)など、バンビ先生の基本スタンスを表したセリフがあります。それだけで判断すると冷たい人のようですが「そばにいるよ」という歌詞から、真剣に寄り添う心が伝わってきます。

自分を変えられるのは、自分しかいない。でも、ずっと見守ってくれる存在がいるならがんばれると思うのです。私はバンビ先生の考え方が好きです。でも弱り切って立ち上がれない人には酷だなあとも思います。

 

その他のコーナー

マトリョーシカ』だけではなく、過去のSHOW-ISMの演目、『TATTOO14』『Underground Parade』『ピトレスク』のコーナーもありました。最後は全員揃って歌とトーク。それぞれは短い時間でしたが、過去に戻って当時の公演を観てみたかったなと思いました。

 

Streaming+で視聴しました

前回と同じく、Streaming+で観ました。今回は初めの方だけ音声が遅れていたのですが、私の環境だけでしょうか。途中からは直りましたし、途切れることなく今までで一番快適に観ることが出来ました。

 

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SHOW-ISMSをStreaming+で3回観た感想

新型コロナの影響下、配信での視聴になりました。家にいるのだから好きな時に観られそうなものですが、意外にもまとまった時間を取ることを難しく感じました。観劇も大事ですが、家族の都合も大切にしたいので。その点、外に出てしまった方が気楽だと思いました。

しかし本来なら観れなかったかもしれない作品を視聴するチャンスがあったことは、ありがたいことです。これからも劇場、配信ともに続けてもらえたらうれしいなと思います。